「退屈した専業主婦」+「バツイチの中年男性」=お笑いとなるのか...70-80年代の英国コメディドラマ『Butterflies』(英語解説あり)
『Butterflies』は1978年から83年までBBC2で放映されたシットコムです。The Good Life同様「中年の危機」を扱ったコメディで、今回は40才の専業主婦リアが主役のお話です。
一応「バツイチの中年男性(レナード)に戸惑いながらも心を開いていく主婦(リア)」という予想通りの展開ではあるものの、日本ならせつない禁断のラブストーリー(メロドラマ?)になりそうなものですが、そんな直球を投げないでコメディにしちゃうところが英国の粋なところ。
さっそく、第一話の前半のあらすじをご紹介します。
①専業主婦リアは、歯医者の夫と十代後半の息子2人と経済的に何不自由のない生活を送っています。元来陽気でおっちょこちょいな性格ですが、クソマジメな夫と、「今が楽しければいい」とパーティーやナンパにうつつを抜かす息子たちとの関係を取り持とうと空回りし、人生に空しさを感じる日々を送っています。
②ある日、リアがカフェで物思いにふけりながらたばこを吸っていると、同じテーブルに座った男性(レナード)が「あなたのたばこの灰がぼくのトライフル(デザート)に落ちているんですが....」と話しかけてきます。それをきっかけに2人は会話を始め、リアは自分が結婚していて幸せだと言い(自分を若く見せるためとっさに息子の年をさば読みしますが..(´д`))、レナードは奥さんに逃げられて今は独身だと言います。そこから愛とは、結婚とは、と中年ならでは話題で盛り上がります。
③夫とのロマンチックな夜を演出しようと思い立ったリアはワインを買い、道を渡っているときに偶然レナードの運転する車にはねられそうになります。レナードは、彼女を落ち着かせようと公園に連れて行き、人生について再び話を弾ませる2人。別れ際にレナードは例のカフェで一緒に昼食を取らないかと誘うのですが....。
ここでは、②のリアがタバコの灰を落とすシーン(一部)をご紹介します。
全編はこのページの最後にリンクを貼っておきます。
リアは買い物に出かけ、途中、昼食を取るため立ち寄ったレストランで、レナードと相席になります。リアがタバコの灰をレナードのデザートに落として謝ったことがきっかけで、2人の会話が始まるシーン。話を交わすうちに、レナードはリアが結婚していることも知り、互いに自己紹介が始まります。
0:46~
Leonard: You are married, then.
(ということは、結婚してるんですね)
Ria: Oh, yes. I am very married.
You know that glue that stick anything to anything? Well, I think it's inside of my wedding ring.
(ええ、ばっちり結婚しています。ほら、何にでもくっつく接着剤ってあるでしょう。私の結婚指輪の内側(と指)はそれでくっついているんだと思うわ。)
Leonard: Oh, I'm Leonard, by the way, Leonard Dunn.
Ria: I'm Ria Parkinson. Mrs. Ria Parkinson.
Leonard: How do you do? (握手)
ここまではいい感じですね。
次にレナードがちょっとした探りを入れてきます
Leonard: Children?(子供は?)
Ria: Yes. I have one son....(ええ、1人の息子は..)
Leonard: You don't look old enough...
(そんな(息子がいるような)年には見えませんね))
Ria: Ten and another one is 9.
((1人は)10歳でもう一人は9歳)
*リアが本当の息子の年齢を言おうとしますが、レナードに「You don't look old enough(あなたはそれほど年取って見えない)」と遮られ、息子の年は10代後半なのに9才と10才と言ってしまいます(聴衆が爆笑するのはそのためです。みなさん身に覚えがあるんでしょうか。)。
ここからさっそく、レナードお得意の「お口説きモード」に入ります。
Leonard: You know, when I first saw you, I thought to myself "Now there is a woman".
(実は、最初にあなたを見たとき、思ったんです。「おっと「本物の女性」がいるぞ」って。)
Ria: (目を見開いてしばらく固まってから)That's what I think, I'd better go now. My husbund is coming home early today and my son Adam crashed his car yesterday...his pedal car! Right into the sideboard.
(そうそう、もう行かなきゃ、夫は今日帰りが早いし、息子のアダムは昨日車をぶつけちゃって...(子供用の)ペダルカーをね! 食器棚に...)
年をサバ読んだことを忘れ、息子が車をぶつけたことをつい言ってしまい、あわてて「pedal car」と言い直します。
Ria: I imagine you've go to get back to work or wife or something.
(あなたも仕事が奥さんか何かの所に戻らなきゃいけないんでしょう。)
Leonard: I don't actually have a wife. She went.
(妻はいないんです。出て行っちゃって。)
Ria: She went?
Leonard: Umm..My best friend said I was too possesive that I ought to let her expand.
She showed up like a band of elastic and expanded from my flat to his.
(親友が、僕は独占欲が強いから、彼女をもっと伸び伸びさせてやるべきだって言ったんですよ。そしたら、彼女は輪ゴムみたいになって、僕のアパートからそいつのアパートの方に伸びていってしまってね。)
最初の文章の「expand」にひっかけてジョークを言っています。
Ria: Love is a funny old thing, isn't it? But all kids chasing butterfulies. You see it, you want it, and you grab it..there it is..All squashed in your hand.
(愛って不思議な物よね。でも子供たちはみんな蝶々を追いかける。見たら欲しくなって手でつかむ...そうして...みんな手の中でぺちゃんこになっちゃうのよ。)
*饒舌なレナードが無口になったのを見て、さすがのリアも空気を読みます。
Ria: Oh I am sorry, you are squeamish.
(あらごめんなさい。気を悪くされたわね)
*squeamish:気分が悪くなる、気難しい気分になる
Leonard: Oh, no no no.. please carry on your powerful metaphors. It takes a problem out of dieting.
(いやいや、そのよくできた比喩を続けてください。食べ過ぎが防げますから。)
*レナードはちょっとした皮肉を言っているのですが、リアは言葉通り受け取って、そのままおしゃべりを続けます。
Ria:Oh well, there is nothing all to say, I suppose. I am a one of the few lucky ones. I live in a pleasant house with a pleasant man, two pleasant sons...(It's just xxx)..My butterflies did't get squashed...
(まあ、別に言いたいことがあるわけじゃないですけど、私はすごく運がいいんでしょうね。居心地のいい家に、愛すべき夫と息子2人..(何か言いかけて)...私の蝶々はぺちゃんこにならなかった。)
*レナードをさらに落ち込ませてしまったことに気づいて、リアはちょっと慌てます。
Ria:Oh, I am sorry for messing up your trifle and putting off your chips.
(トライフルをダメにした上に、チップス(フライドポテト)を食べられなくしてごめんなさい。)
putting off your chips:直訳すると「あなたのチップスを思いとどまらせる」。つまり、リアの話で食欲がなくなって彼のお皿にのっていたチップスが食べられなくなったことを指していると思われます。
Leonard: Well, at least I escaped with my coffee.
(まあ、少なくともコーヒーは無事だったし)
その後、リアは振り返りざまにショルダーバッグで彼のコーヒーを倒します。さすがのリアも言葉を失い、「Yes」とだけ言って逃げるようにその場を立ち去ります。)
スクリプトが見つからなかったので私の聞き取り&訳は完璧ではないかもしれませんが、雰囲気をつかんでいただければ嬉しいです。
二人のシーンはこのようにいつもテンポがよく会話が進んでいきます(その分早いし聞き取りも難しいです..(TT))。
一方彼女の夫はいい人なのですが、昔気質で真面目、悪く言えば「ノリの悪い」タイプで、愛情表現も下手。そんな夫がナンパ盛りの息子たちと合うはずもなく、家族のコミュニケーションはいつもギクシャクしているため、会話が途切れ途切れです。息子たちはちょっと若者風なしゃべり方をしているので聞き取りにくいですが、一応雰囲気が分かる動画を見つけましたのでリンクしておきます。
www.youtube.com動画の補足:
「お湯がない」と文句を言う夫。彼がバスローブを着ていることから、これからシャワーかお風呂にしようと思っていたことがうかがえます。息子たちを(リア経由で)問い詰めて先にお風呂でお湯を使ってしまったので、貯蔵式の給湯タンクが空になってしまったことを知ります。ここで事情を説明すると、英国では貯蔵式の給湯タンクを使っている家庭がけっこうあり、その場合は家族間で使用する時間を調整しないとこういうトラブルが起きます(日本みたいに追い炊きできればいいんですが)。
その後、夫がリアに向かって、いい年しているのに仕事もしないでぶらぶらしている息子たちの事を嘆きます。そして「僕の若い頃は...」と始まります。リアは、「時代が違う」と夫を諭そうとします。どこの国も同じですね。
このコメディはカーラ・レーンという女性の脚本家が書いています。それだけに当時の女性はいろいろと共感できる部分があったようです。78-83年まで、4シリーズ(全28話)続きました。
こちらが全編です(daily motionより)
なお、このドラマのオープニングテーマは「Love Is Like a Butterfly」(Dolly Parton )という曲です。
では
Have a nice day!