一昔前の英国ドラマやコメディの世界へようこそ

1960-90年代の英国のドラマやコメディの独特の魅力をご紹介。ときどき英語のお話もします。

英国の田舎の邸宅に暮らす気難しい独身女性と不思議な使用人の心の交流を描いた『マルベリー』

今回は、1990年代にBBCで放映されたシットコム、『Mulberry』(マルベリー)をご紹介します。

シットコム(situation comedy)とはいっても、以前ご紹介したRising Dampのように一話完結で次から次へとジョークが飛び出すわけではなく、登場人物が面白い会話を交わしているうちに物語が展開していくというシリーズドラマです。ファンタジー的な要素もあり、全編に独特の雰囲気が漂っています。

主人公のミス・ファーナビーを演じたジェラルディン・マクイーワンは、ミス・マープルの役を演じたこともあるので、見覚えのある方もいらっしゃることでしょう。

 

早速、第1話のあらすじをご説明します。****

舞台は英国の田舎のマナーハウス。スーツケースを持った若い女性が邸宅のドアから出てくるところから話は始まります。家の前に停められた車に口紅で「罵り言葉」を書いた後、せいせいした表情で立ち去っていきます。

邸宅の女主人はミス・ファーナビー。彼女は使用人の夫婦(バート&アリス)と、身の回りの世話をする女性を雇っていましたが、彼女が辞めてしまったことから、バートとアリスが台所で募集の張り紙を書いています。なんとか文章を仕上げ、郵便局に広告を出しに行こうと夫のバートがドアを開けた瞬間、見知らぬ男性が玄関に立っています。マルベリーと名乗るその男は、公募前なのになぜか世話人のポストが空いていることを知っています。

さらには、階段の手すりを滑り降りてきたり、名前をきくとマルベリーとしか答えなかったり、推薦状を持っていなかったり(英国では推薦状を求められることが多い)など、なんだかちょっと怪しげです。あの気難しいミス・ファーナビーが、こんな変な男を雇うはずはないと思いきや、マルベリーは一向に気にする様子もなく、面接を受けるため意気揚々とミス・ファーナビーの部屋へ入り、さまざまなやり取りの末、めでたく使用人に採用されます。

ミス・ファーナビーは、マルベリーに対して雇い主と使用人の関係を厳密に守ろうとしますが、マルベリーはその繊細な心と優れた洞察力で、少しずつ彼女の心の中に入っていきます。

妹からの電話で機嫌が悪くなったミス・ファーナビー。彼女が妹から突然「屋敷にある揺り木馬を孫にあげたいので、譲って欲しい」と言われますが、本人は譲る気はさらさらなく、頑な態度を決め込んでいます。マルベリーはそんな彼女の心に寄り添い、過去と向き合って、妹に揺り子馬を譲るよう促します。

夜になり、マルベリーが外を歩いていると、黒いコートを着た男が彼の前に現れます。「彼女のことが気に入ってしまった」と言うマルベリーに対し、黒いコートの男は、「気に入ったかどうかなど、関係ない。君には選択肢はない」と答えるのでした...。

*****

 

www.youtube.com

オープニングは歌から始まります。タイトルは「Mulberry Days」で主人公演じる俳優が自ら歌っています。

主人公のミス・ファーナビーは上流階級で、独特の発音と遠回しな表現をする傾向がありますが、単語の切れ目がはっきりしているので、慣れれば聞き取りやすいかもしれません。バートとアリスは労働者階級で、単語の冒頭のHや最後のtが落ちたり、独特の言い回しがあったりして、私はあまり聞き取ることができなかったため、英語紹介ではマルベリーとミス・ファーナビーを中心にご紹介します(マルベリーも労働者階級っぽい話し方です)。

 

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では第一話(一部)の英語解説をします。

バートが使用人の募集広告を持って郵便局に出かけようとドアを開けると、マルベリーが立っていたというシーンです。

字幕は自動字幕が出ます。精度はまあまあです。(以下は主に聞き取りで文字を起こしているため、ミスがある可能性があります。ご容赦ください)

4:00~

Mulberry: Hello. I've come about the job.

こんにちは。例の仕事の件で来ました。

Burt: You can't have. I haven't put the card on the post office window yet.

そんなはずないよ。まだ郵便局の窓に募集広告を貼ってないんだから。

Mulberry: Haven't you? I thought you had.

まだ出してないんですか?もう出したと思ってました。

Burt: I haven't. It's here in my hand.

まだ出してないよ。僕が手に持ってるんだもの。

Mulberry: Oh, you won't be needing that now, will you?

ああ、それはもういりませんね。

Can I come in?

入ってもいいですか?

Burt: I suppose so yeah.

まあ、いいんじゃないかな。

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階段の手すりを滑り降りてきたマルベリー

Mulberry: Oh, I love these!

これ、すごい気に入った!

Burt: What's the matter with you? Have you escaped from *somewhere?

一体どうしたっていうんだ?どこかから逃げてきたのか?

*ここのsomewhereは、精神病院等の施設のようなものを指していると思われます。

Mulberry: Yes. A home for *compulsive banister sliders.

ええ。「*”強迫性手すり滑り者”のための施設」からね。

*ジョークです。バートの言葉を受けて、マルベリーが思いつきで作った(病人用の)施設名です。ちょっとお茶目な表情をしていますね。

*compulsive:強迫性の

Alice: What's going on out here?

何の騒ぎ?

Burt: He's just slid down the banisters!

こいつ、今さっき手すりを滑り降りてきたんだよ!

Alice: You did what?

何をしたですって?

Mulberry: Is that squid cooking?

イカを調理してるの?

***

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マルベリーが面接を受けるため、ミス・ファーナビーの部屋に入るシーン

6:33~

机の上にはクロスワードの本などが積まれており、ミス・ファーナビーが、サッカーの写真に印を付けています。これは英国で昔からある「Spot The Ball」(仮訳:ボールの位置を当てよう)というサッカーのクイズコンテストで、画像処理によりボールだけが消された写真を見て、実際にボールがある場所を当てるというものです(https://www.spottheball.com/competitions-uk)。

Miss Farnaby: Come in.

お入りなさい

Burt: Excuse me Miss Farnaby. I've got a job applicant for you.

失礼します、ミス・ファーナビー。採用希望者がいます。

Miss Farnaby: Already?

もう?

Burt: I ran down to the post office *first thing this morning to get the card in the window, Miss Farnaby.

郵便局の窓に広告を貼るため、*朝一番で郵便局に行ったんです、ミス・ファーナビー。

*もちろんウソです。

Miss Farnaby: Did you? Well, you'd better show her in.

あらそう。じゃあ、彼女を部屋に通しなさい。

Burt: Actually, It's "him".

実は男なんです。

Miss Farnaby: Ah...First impressions?

あらそう。で、第一印象は?

Burt: Um..I'm trying to think of a word.

えーっと...しっくりくる言葉を探しているんですが。

Miss Farnaby: Don't bother *Albert, just show him in!

もういいわ。さっさと彼を部屋に通しなさい。

*Albert:バート(Burt)の正式名。愛称で呼んでいないことからも、彼女の使用人に対する姿勢がうかがえます。

Burt: Mulberry, Miss!

こちらがマルベリーです

Mulberry: Morning!

おはようございます!

Miss Farnaby: Good morning! Now then...

おはよう。ではさっそく..

Mulberry: So, that's where you reckon the ball is here.

で、あなたはここにボールがあるって推測するんですね。

Miss Farnaby: Yes.

そうよ。

Mulberry: Never. That man has obviously headed the ball.

それはありえないな。こっちの男が(ボールを)ヘディングしたことは明らかだ。

(head: 動詞で「ヘディングする」の意味)

Now look at the expression on his face. He's obviously jumped too soon.

顔の表情を見てください。彼は明らかにジャンプするタイミングが早すぎた。

He's on his way down and the ball has gone over his head, and hit this man on the back of the head.

彼はジャンプして空中から落下してきているところで彼の頭上をボールが通過した、そして、こっちの男の後頭部にボールが当たったんだ。

Miss Farnaby: How could you possibly justify this?

なぜそんなに確信が持てるのよ?

Mulberry: Well, it says all over the place.

あちこちがそう物語っているもの。

Miss Farnaby: That's just a bad haircut.

下手な散髪のせいでしょ。

Mulberry: No, the balls hit him back of the head making his hear shoot forward. That makes the ball about...here! Can I borrow your pen?

いや。ボールが彼の後頭部に当たって、彼の髪の毛が前になびいたんだ。だからボールはこの辺りに..ペンを借りてもいいですか?

Miss Farnaby: No, you can't borrow my pen! Sit down!...Sit there.

いいえ、私のペンを借りることはできません。座りなさい!そっちに座りなさい!

Mulberry: That broke the ice, didn't it?

これで緊張がほぐれましたね。

*break the ice: 堅苦しい雰囲気/緊張をほぐす

Miss Farnaby: I don't need any ice to be broken, *thank you.

私は緊張する必要など全くありません。

*thank you : ちょっと皮肉がこもっています。

Now, a few questions

では、いくつか質問を。

Mulberry: Fine. Can I take you up for the living in?

了解。住み込みで引き受けていいですか?

take someone up on something : ~のオファー(依頼/申し出)を引き受ける

 "take you up”の後の"on your offer" が省略されていると考えると、「仕事のオファーを引き受ける」という意味になります。

live in: 住み込みで働く

Miss Farnaby: Questions from me to you.

質問は私からあなたにするのです。

Mulberry: Sorry. Far away. すみません。勘違いしました。

(far away: 遠く離れた->本来あるべきなのと真逆のことをしてしまったというニュアンス)

Miss Farnaby: What was your last employment? 前職は?

Mulberry: ..

Miss Farnaby: Well? どうなの?

Mulberry: ..Well you could say mucking out horses, really. 

馬小屋の掃除(馬の世話)ってとこかな

muck out: 動物の小屋の掃除(動物の世話)

Miss Farnaby: You thought it would be a step up for you, did you?...Mucking out me. 

今回の仕事があなたにとってのキャリアップだと思ったってわけ?

私の世話をすることが?

*Mucking out me:普通は人間に対してこのような表現はしないのですが、Mucking outの後ろにmeを入れることで、「馬の次は私?」という皮肉がこもっています。

.....

いつもは使用人と距離を置き、必要最低限の会話しか交わさないミス・ファーナビーですが、自分が一生懸命取り組んでいるクイズにマルベリーが興味を示したため、初対面にもかかわらず立場や状況を忘れて会話を弾ませてしまいます。

我に返ったミス・ファーナビーが「質問を..」と言うと、マルベリーは勘違いして逆に質問をして怒られます。

気を取り直して、ミス・ファーナビーが前職を尋ねると馬小屋掃除だと言う。さらに経験、資格、紹介状はない、と答えるマルベリーに、ミス・ファーナビーは呆れ気味に尋ねます。

10:43~

Miss Farnaby: Can you give me any reason at all why I should consider employing you?

私があなたを雇うことを検討すべき理由を挙げられるかしら?

Mulberry: Because I've taken a shine to you.

だって、僕があなたのことを気に入ったから。

take a shine to someone: ~のことを気に入る

仕事のキャリアはないし、立場をわきまえないとんちんかんなやり取りをするマルベリーですが、なぜか、この後マルベリーはめでたく採用されます..。

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次は、揺り子馬に関係するシーンです。

23:38~

屋根裏部屋で物思いにふけるミス・ファーナビーの元に、マルベリーがやってきます。

(ここから先は自動字幕が割と正確です)

ノックするマルベリー

Miss Farnaby: Go away.

去りなさい

Miss Farnaby: Come in. What do you want? 

入りなさい。何か用?

Mulberry: I thought you might like to talk to somebody.

あなたが誰かと喋りたいんじゃないかと思って

Miss Farnaby: You've got a very inflated opinion of yourself.

想像力を膨らませすぎね

Mulberry: Oh look! I love this!

すごい、これ大好き!

Miss Farnaby: Don't touch anything in here.

ここにある物を触るんじゃありません

Mulberry: What is his name?

彼の名前は?

Miss Farnaby: He hasn't got a name.

名前はないわ

Mulberry: Well, I've never heard a rocking horse without a name.

名前が付いていない揺り子馬なんて聞いたことないけど

Miss Farnaby: I know what you are up to. He's not going to Adel's little monster.

あなたが何を企んでいるか分かっているわよ。揺り子馬はアデルの孫にはやりません。

(Adel は妹(または姉)の名前、little monster :小さな暴れん坊(Adelの孫のこと))

Mulberry: Well, suppose she is legally entitled to a third of him.

うーん。彼女は法的には*1/3を所有する権利があると思うけど。

*ミス・ファーナビーは3人姉妹のため。

Mind you, you wouldn't want to saw him out would you?

だからといって、あなただって揺り子馬をノコギリで切り分けたくはないでしょう?

Miss Farnaby: If we did, I'd bet I'd be the one to get the back-end.

もし切ることになったら、*後部をもらうのは私に決まってるわ。

*ミス・ファーナビーの皮肉のこもったジョーク。

頑ななミスファーナビーを見て、マルベリーはこれ見よがしに涙ぐんでみせます。

Miss Farnaby: What are you doing?

何しているのよ

Mulberry: Well, I'm just having a howl, that's what you want, isn't it?

泣きわめいてみただけですよ。それがあなたの望みでしょう?

Miss Farnaby: Are you implying that I am indulging in self-pity?

私が自己憐憫に浸っているとでも?

Mulberry: Yes. 

ええ

Miss Farnaby: You have not been employed here as a resident psychologist.

あなたは住み込みの精神科医として雇われたわけではありません。

Keep your thought about me to yourself.

自分の考えは心の中にしまっておきなさい。

Mulberry: Yes, Miss Farnaby.

(小声で) I bet she does want to talk with somebody, Mulberry.

彼女は誰かと話したがっているぞ、マルベリー。

Miss Farnaby: What did you say? 

なんて言ったの?

Mulberry: I had a thought about you but I was keeping it to myself.

あなたに対する考えはあるけど心の中にしまっておいたんだ。

Miss Farnaby: What was it? 

しまっておいた言葉って?

Mulberry: *Give us a sherbet dab and I will tell you.

俺たちにシャーベットダブをくれれば話すぞ。

sherbet dab:子供向けのお菓子の名前。わざと子供っぽい口調で喋って、場をなごまそうとしています。

Miss Farnaby: What were you thinking?

何を考えていたの?

Mulberry: I was just thinking you might like to talk to somebody.

あなたが誰かと喋りたいんじゃないかって考えていただけです。

Miss Farnaby: I don't want to talk about myself.

自分のことは話したくないの。

Mulberry: Or I will talk about something else then.

じゃあ他の話題について話しますよ。

What were you like as a child?

小さいときはどういう子供でした?

Miss Farnaby: That is about me! 

それって私についてじゃない!

Mulberry: I bet you and sisters had some larks up here, right?

妹たちと一緒にここでいろいろ楽しんだんでしょう?

lark:戯れ、ふざけ、愉快、いたずら

larksと複数形になっていることから、子供時代の姉妹がふざけあったりいたずらをしたりして、キャッキャ笑っている様子が思い浮かびます。

Miss Farnaby: Well I suppose we did...Yes we did.

そうだったかしらね...ええ、そうだったわ。

Mulberry: Did you make pastry? 

ペストリーは作った?

Miss Farnaby: Yes we did.

ええ、作ったわ

Mulberry: I bet all the dough got all gray with your grubby little fingers all over it.

あなたの汚い小さな指で触った生地があちこち灰色になってたでしょう。

Miss Farnaby: My father actually used to eat it.

父はいつも食べたのよ。

Mulberry: It's nice to know you were loved.

あなたが愛されたと分かってよかったです。

そこから再び打ち解けた雰囲気の会話をしばらくしたあと、マルベリーが本題に移ります。

26:30~

Mulberry: You are just being a dog in the manger.

意地悪しているだけじゃないですか。

dog in the manger :意地悪、意地悪な人(イソップ物語からきている慣用句です)

Miss Farnaby: I am not. It's all I've got. This.

違うわ。私が持っている物はこれだけなの。

Mulberry: To do what with?

それで何をするんですか?

Miss Farnaby: Remember.

思い出すのよ。

Mulberry: The happy time you mean?

幸せだった時代ってこと?

Miss Farnaby: All right. Yes.

そうね。

Mulberry: Bit backward-looking isn't it?

ちょっと後ろ向きじゃないですか?

Miss Farnaby: I haven't got anything to look forward to.

待ち遠しい事なんて何もないですもの。

Mulberry: You've got a result of spot the ball competition next week.

来週には「Spot The Ball」コンテストの結果が出るじゃないですか。

Brand new ball going to invent and that's just for *starters.

発明すべき新しいボールゲームだってあるし、そんなのまだ序の口ですよ。

Brand new ball going to invent: この少し前に2人が新しいボールゲームを考えていたことを受けてこう言っています。

Miss Farnaby: And what's for afters. で、その後に何があるのよ。

Mulberry: How old are you, Miss Farnaby? あなた、おいくつですか

Miss Farnaby: 36.

(当ブログのButterfliesでもそうでしたが、みなさん堂々とさば読みされますね。うらやましい限りです...)

Mulberry: Now just what I would have guessed. 思った通りだ。

See who you love afters. じゃあ、その後は愛する人に会えばいい。

Don't ask me what they are ...make them.

それが何かなんて僕に聞かないでくださいよ。自分で作るんです。

You made gray dough.

灰色の生地を作ったんでしょ。

Go on let the boy have a rocking horse.

ほら、妹の孫に揺り子馬を譲りましょう。

Let him have it.

彼にあげなさい。

Miss Farnaby: Uh...I'll let him have it

ゆずるわよ。

Mulberry: Do you want last go on him?

最後の乗馬をしたいですか?

Miss Farnaby: Don't be absurd.

馬鹿なこと言わないでよ。

Mulberry: I think you should.

乗るべきだと思いますよ

Miss Farnaby: I'm too old.

年取り過ぎているもの。

Mulberry: Nobody is too old whether go on a rocking horse. Come on!

揺り子馬を乗る年齢に上限はありませんよ。ほら!

Miss Farnaby: His name is Ralph.

彼の名前はラルフよ。

Mulberry: I will hold his head steady. There you are.

動かないように頭を押さえますから。(馬をあやした後)ほーら。

Away you go, Miss Farnaby.

いってらっしゃい、ミス・ファーナビー。

少女のような表情になるミス・ファーナビーを見て、マルベリーは少し複雑な表情になります。

 

28:31~第一話の最後は夜の屋外、黒服の男(The Stranger)とマルベリーの会話です。

分かりやすいので、日本語訳を付けずにご紹介します。

The Stranger: What do you mean you like her?

Mulberry: I said I like her.

The Stranger: It won't make any difference, you know?

Mulberry: You are depressing, you are.

The Stranger: And you have no choice.

なんだかちょっと不吉な会話ですね。日本語だったらどんな感じになるのか、想像してみてはいかがでしょう..

 

*******

マルベリーは諸処の事情で予定していたシリーズ3の製作が中止され、シリーズ2で終わってしまたため、ちょっと中途半端な終わり方という印象です。でも、幻想的な物語をベースにしたコメディというのは少し珍しいので、当時は結構話題になったようです。

イギリスの田舎の秋から冬にかけての景色はなかなか叙情的で、ドラマの中でもそれを見て取ることができます。そんな素朴な景色とセンチメンタルな話の展開に、私は思わず胸がキュンとしてしまうのです...。

会話主体で話が展開するため、英語紹介が長くなってしまいました。ネイティブスピーカーの夫の助けもずいぶん借りました。でも、ブログを書くことで、改めていろいろな発見があり、とても楽しかったです。

 

ではでは..

Have a nice day!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イギリスのボロ下宿の大家と下宿人たちが織りなすシットコム『Rising Damp』(ライジング・ダンプ)

『Rising Damp』は1974年から78年まで英国で放映された、下宿を舞台にしたコメディドラマです。

下宿の大家で中年独身男性のリグスビー(Rigsby)、下宿に住む医大生のアラン(Alan)、若いとは言いがたい年齢の独身女性ミス・ジョーンズ(ルース)(Ms. Ruth Jones)、そして最初のエピソードで新しく入居するアフリカからの留学生のフィリップ(Phillip)の4人を中心に話が展開していきます。

下宿の建物は古くて薄暗く、かなり老朽化していますが、リグスビーは修繕やリフォームをする気はさらさらありません。住人の部屋にはズカズカ入ってくるし、相手によって家賃を変えてしまうリグスビーは、権威に弱い性格が禍してトラブルに見舞われることもしばしば。

なお、ドラマの途中で聞こえてくる拍手や笑い声は本物です。当時のシットコムでは、場の雰囲気を作るため、スタジオに本物のお客さんを入れて演技するのが普通でした。俳優さんとしてはなかなかやりがいがあったんじゃないでしょうか。

ではさっそく、ドラマ(第一話)の概要をご紹介します。(自動字幕表示可)www.youtube.com

 

<あらすじ>

アランがリグスビーのいる部屋に入ってきます。アランが今住む部屋は寒くて湿気が多いため、この空き部屋に移りたいとリグスビーに前々から訴えているのですが、高い家賃をふっかけられたりして話が先に進みません。そんな中、同じく下宿の住人のミス・ジョーンズが部屋に入ってきて、「自分の知り合いを一人下宿に住まわせて欲しい」とリグスビーに頼みます。

ミス・ジョーンズがベタ褒めする「男子学生」に軽く嫉妬を覚えつつもリグスビーは承諾しますが、その男子学生はアフリカからの黒人留学生だったことが分かります。

フィリップに対する好奇心を隠さないアランと、好奇心に加えてヤキモチと猜疑心と偏見で頭がいっぱいのリグスビーは、フィリップに話しかけたり質問攻めにしたりします。一方ミス・ジョーンズはエキゾチックな魅力を放つフィリップを誘惑すべく奮闘しますが、フィリップは全く乗り気ではありません。

大家と下宿人たちの絶え間ない邪魔に辟易したフィリップは、他の下宿を探そうと荷造りを始めます。

慌てたリグスビーはフィリップが出て行くのを止めるべく、もう少し静かな部屋がある、と言い、アランが既に入居している屋根裏部屋にフィリップが住むことを許可してしまうのでした。

では一部英語解説をします。英語のスクリプトはないので、自動翻訳などの助けを借りて英語を書き出しています。至らぬ点はご容赦くださいm(__)m

冒頭部分をご紹介します。

このドラマのタイトルがなぜ「Rising Damp」なのかが分かりますよ(^^)。

0:48-

Alan:Ah Rigsby. Have you thought any more about the room?

(リグスビー。部屋について考えてくれましたか?)

Rigsby: I've thought about it, yes.

(うん、考えたよ)

Alan: And you said you considered me.

(僕の事も考慮してくれるって言ってましたよね)

Rigsby: Did I?

(そうだっけ?)

Alan: Yeah, you did say that.

(ええ。言ってましたよ)

Rigsby: Oh, no. You couldn't afford a room like this.

(いやいや、君にはこんな部屋の家賃は払えないよ)

Alan: How much is it?

(いくらですか?)

Rigsby: Six.

(6ポンド)

Alan: Six! You can't charge six for this!

(6ポンドだって!この部屋で6ポンドの家賃は取れないでしょう!)*charge: 請求する

Rigsby: Why not?

(なんでだよ?)

Alan: It's too small.:

(狭すぎるもの) 

Rigsby: It looks small. That's a heavy wall paper. Should've used a paler color.

(狭く見えるだけだよ。壁紙の色が重たいせいさ。もっと淡い色を使うべきだったな)

But you could't get a room like this for less than six. 

(だけど、6ポンドより安い家賃でこんな部屋借りられないだろ)

I mean look at this. It's functional with just a hint of luxury.

(ほら、見てごらん。機能的でちょっと高級感もある)

Yes, it should appeal to the professional class. 

(知的職業人にウケるはずだよ)

All I've got to do is to get a phone in.

(後は部屋に電話を引くだけさ)

Alan: Who put a phone in, it looks like a telephone box!

(電話ボックスみたいな(この狭い)部屋に、誰が電話を入れるんですか!)

Rigsby: Very funny. But so small why do you want it?

(面白い事言うじゃないか。でもそんなに狭いって言っておきながら何故この部屋がいいんだ?)

Alan: Because it's freezing up there and it's damp!

(上の部屋はすごく寒いし、湿気てるからです!)

Rigsby: I've told you before, it is not a damp.

(前に言っただろ。湿気じゃないって)

Alan: I've got rising damp! My furniture is falling to pieces.

(地面から湿気が上がってきてるんです!家具がバラバラになりかけてるんですよ)

Rigsby: How can you have rising damp in the attic? 

(屋根裏に湿気がどうやって上がってくるんだよ?)

You are higher than the crows up there.

(君はカラスより高いところにいるんだぞ)

Should be very healthy like Switzerland.

(スイスみたいにすごく健康にいいはずじゃないか)

Alan: Switzerland?! Rigsby, my suits are going green.

(スイスだって!リグスビー、僕のスーツはだんだん緑色*になってきているんです)よ)*going green:おそらく「(湿気で)苔などが生えてきている」と考えられます

Rigsby: I don't deny your suits are going green, but it is not rising damp.

(君のスーツが緑色になってきていることは否定しないけど、床からの湿気じゃないよ)

Alan: What is it, then?

(じゃあ、何なんですか?)

Rigsby: Condensation.

(結露さ)

Alan: Condensation?

(結露だって?)

Rigsby: Yes. And you know why? Because you try to cook a five course meal on one gas ring. I can see a steam some nights.

(ああ。どうしてか分かるか?君が5コース料理をガスコンロ1口で料理しようとするからだ。夜に時々蒸気が見えてるぞ。)

Alan: That's because it's cold up there.

(それは上の部屋が寒いからですって)

Rigsby: Yes, of course it's cold. I never said it wasn't.

(ああ、もちろん寒いさ。寒くないなんて一度も言ってないだろ)

There is nothing between this house and the Urals.

(この建物とウラル山脈の間には何もないからな)

You're breathing the same air as the Tartars up there. Look how long they live.

(高地に住むタタール人と同じ空気を吸ってるんだぞ。彼らがどんだけ長生きか考えてみろ)

I should charge extra for that.

(その分追加でもらわなきゃ)

Alan: I can't go on like this* Rigsby.

(埒があきませんね、リグスビー)

*can't go on like this:こんな感じを続けられない->こんなの延々とやってられないよ っと言ったニュアンスです

 

ものすごい早口で屁理屈をまくしたてるリグスビーに対して、アランもがんばって言い返していますが、いまひとつ強気に出られない所をみると、おそらく相場よりも安いので足元を見られているのでしょう。

なお、冒頭で「6ポンド」と言っていますが、おそらく月ではなく週払いの家賃と思われます。

 

この後14:38~や19:16~で見られるミス・ジョーンズとフィリップのかけ合いもちょっとご紹介します。基本はミス・ジョーンズが迫って、フィリップが逃げ気味というパターンです。

14:38より、一部をご紹介します(この二人は互いをRuth, Philipとファーストネームで呼び合っています)。

 

Ruth : Philip, at last! I've been so impatient waiting for the others two go.

(フィリップ、やっとね!他の2人がいなくなるのをジリジリして待ってたのよ)

I wanted to give you a proper welcome. Are you all right for butter?*

(あなたをきちんと歓迎したかったの。バターは足りてる?*)*直訳は「バターは大丈夫?」。特に意味はないみたいですが、女性らしい質問ともいえます。

Philip: Do you think we should be doing this?

(僕たちこんなことしていいと思っているのかい?)

Ruth: You realize? This is the first time being alone since that night.

(気がついた?あの夜以来、2人きりなるのはこれが初めてよ)

Philip: What night?

(どの夜?)

Ruth: That night. You haven't forgotten, Philip?

(あの夜よ。忘れてしまって?)

Philip: Oh, that night.

(ああ、あの夜ね)

Ruth: Don't you remember? You said my skin is like a skin of fruit. I thought that was lovely. So poetical...What fruit did you mean? **

(覚えていないかしら?私の肌は果物の皮みたいだって言ったじゃない。素敵だって思ったわ。とても詩的...それってどの果物のこと?**

*英語では果皮のこともskinと言います。

Philip: Ruth, I'd rather busy at this moment. We've got to think of appearances.

(ルース。今忙しいんだ。世間体も考えないと)

*appearanceは「外見」の意味でよく使われますが、この場合は周囲からどう見えるか、つまり世間体を指していると思われます。

Ruth: I don't care about appearances. Let's be impulsive. Let's ruin life into the dregs.

(世間体なんて気にしないわ。衝動に身を任せて、一緒に堕ちましょう。)

*ruin lifeは「人生を台無しにする」 dregは「くず」

ここのポイントは、ルースとフィリップが互いの関係についての見解がずれているという点です。フィリップは学生とはいえ、「酋長の息子」(本人曰く)ということもあってか、かなり大人びていて、女性が迫ってきたくらいでは動揺するほどウブではありません。

一方のルースは、元々ちょっと変わった性格であるとはいえ、話している英語からおそらく下位中流階級(lower middle)の出身で、仕事を持った独立した女性で、それなりにちゃんとした(身持ちの堅い?)生活をしていることがうかがえます。

オクテ気味の英国人男性では物足りなく、異国から来たワイルドな彼と奔放なロマンスを経験したいという彼女の情熱というか妄想がひしひしと伝わってきます。

なお、ルースが「Are you all right for butter?*」とか「What fruit did you mean? **」と聞くところで観客の笑いが起きますが、これはロマンチックな会話の途中で彼女がふと現実的な質問をしたり、我に返ったりしているからだと思われます(パイナップルとかミカンとかじゃないといいですけどね)。

 

今では日本でもなかなか見られない下宿ですが、風呂トイレ付きのワンルームアパートではみられないノスタルジックで庶民的な雰囲気を味わっていただければ嬉しいです。

 

ではでは

Have a nice day!

 

 

 

 

 

 

「退屈した専業主婦」+「バツイチの中年男性」=お笑いとなるのか...70-80年代の英国コメディドラマ『Butterflies』(英語解説あり)

『Butterflies』は1978年から83年までBBC2で放映されたシットコムです。The Good Life同様「中年の危機」を扱ったコメディで、今回は40才の専業主婦リアが主役のお話です。

一応「バツイチの中年男性(レナード)に戸惑いながらも心を開いていく主婦(リア)」という予想通りの展開ではあるものの、日本ならせつない禁断のラブストーリー(メロドラマ?)になりそうなものですが、そんな直球を投げないでコメディにしちゃうところが英国の粋なところ。

 

さっそく、第一話の前半のあらすじをご紹介します。

①専業主婦リアは、歯医者の夫と十代後半の息子2人と経済的に何不自由のない生活を送っています。元来陽気でおっちょこちょいな性格ですが、クソマジメな夫と、「今が楽しければいい」とパーティーやナンパにうつつを抜かす息子たちとの関係を取り持とうと空回りし、人生に空しさを感じる日々を送っています。

②ある日、リアがカフェで物思いにふけりながらたばこを吸っていると、同じテーブルに座った男性(レナード)が「あなたのたばこの灰がぼくのトライフル(デザート)に落ちているんですが....」と話しかけてきます。それをきっかけに2人は会話を始め、リアは自分が結婚していて幸せだと言い(自分を若く見せるためとっさに息子の年をさば読みしますが..(´д`))、レナードは奥さんに逃げられて今は独身だと言います。そこから愛とは、結婚とは、と中年ならでは話題で盛り上がります。

③夫とのロマンチックな夜を演出しようと思い立ったリアはワインを買い、道を渡っているときに偶然レナードの運転する車にはねられそうになります。レナードは、彼女を落ち着かせようと公園に連れて行き、人生について再び話を弾ませる2人。別れ際にレナードは例のカフェで一緒に昼食を取らないかと誘うのですが....。

ここでは、②のリアがタバコの灰を落とすシーン(一部)をご紹介します。

全編はこのページの最後にリンクを貼っておきます。

 

リアは買い物に出かけ、途中、昼食を取るため立ち寄ったレストランで、レナードと相席になります。リアがタバコの灰をレナードのデザートに落として謝ったことがきっかけで、2人の会話が始まるシーン。話を交わすうちに、レナードはリアが結婚していることも知り、互いに自己紹介が始まります。

0:46~

Leonard: You are married, then.

(ということは、結婚してるんですね)

Ria: Oh, yes. I am very married.

You know that glue that stick anything to anything? Well, I think it's inside of my wedding ring.

(ええ、ばっちり結婚しています。ほら、何にでもくっつく接着剤ってあるでしょう。私の結婚指輪の内側(と指)はそれでくっついているんだと思うわ。)

Leonard: Oh, I'm Leonard, by the way, Leonard Dunn.

Ria: I'm Ria Parkinson. Mrs. Ria Parkinson.

Leonard: How do you do? (握手)

ここまではいい感じですね。

次にレナードがちょっとした探りを入れてきます

Leonard: Children?(子供は?)

Ria: Yes. I have one son....(ええ、1人の息子は..)

Leonard: You don't look old enough...

(そんな(息子がいるような)年には見えませんね))

Ria: Ten and another one is 9.

((1人は)10歳でもう一人は9歳)

*リアが本当の息子の年齢を言おうとしますが、レナードに「You don't look old enough(あなたはそれほど年取って見えない)」と遮られ、息子の年は10代後半なのに9才と10才と言ってしまいます(聴衆が爆笑するのはそのためです。みなさん身に覚えがあるんでしょうか。)。

ここからさっそく、レナードお得意の「お口説きモード」に入ります。

Leonard: You know, when I first saw you, I thought to myself "Now there is a woman".

(実は、最初にあなたを見たとき、思ったんです。「おっと「本物の女性」がいるぞ」って。)

Ria: (目を見開いてしばらく固まってから)That's what I think, I'd better go now. My husbund is coming home early today and my son Adam crashed his car yesterday...his pedal car! Right into the sideboard.

(そうそう、もう行かなきゃ、夫は今日帰りが早いし、息子のアダムは昨日車をぶつけちゃって...(子供用の)ペダルカーをね! 食器棚に...)

年をサバ読んだことを忘れ、息子が車をぶつけたことをつい言ってしまい、あわてて「pedal car」と言い直します。

Ria: I imagine you've go to get back to work or wife or something.

(あなたも仕事が奥さんか何かの所に戻らなきゃいけないんでしょう。)

Leonard: I don't actually have a wife. She went.

(妻はいないんです。出て行っちゃって。)

Ria: She went?

Leonard: Umm..My best friend said I was too possesive that I ought to let her expand.

She showed up like a band of elastic and expanded from my flat to his.

(親友が、僕は独占欲が強いから、彼女をもっと伸び伸びさせてやるべきだって言ったんですよ。そしたら、彼女は輪ゴムみたいになって、僕のアパートからそいつのアパートの方に伸びていってしまってね。)

最初の文章の「expand」にひっかけてジョークを言っています。

Ria: Love is a funny old thing, isn't it? But all kids chasing butterfulies. You see it, you want it, and you grab it..there it is..All squashed in your hand.

(愛って不思議な物よね。でも子供たちはみんな蝶々を追いかける。見たら欲しくなって手でつかむ...そうして...みんな手の中でぺちゃんこになっちゃうのよ。)

*饒舌なレナードが無口になったのを見て、さすがのリアも空気を読みます。

Ria: Oh I am sorry, you are squeamish. 

(あらごめんなさい。気を悪くされたわね)

*squeamish:気分が悪くなる、気難しい気分になる

Leonard: Oh, no no no.. please carry on your powerful metaphors. It takes a problem out of dieting.

(いやいや、そのよくできた比喩を続けてください。食べ過ぎが防げますから。)

*レナードはちょっとした皮肉を言っているのですが、リアは言葉通り受け取って、そのままおしゃべりを続けます。

Ria:Oh well, there is nothing all to say, I suppose. I am a one of the few lucky ones. I live in a pleasant house with a pleasant man, two pleasant sons...(It's just xxx)..My butterflies did't get squashed...

(まあ、別に言いたいことがあるわけじゃないですけど、私はすごく運がいいんでしょうね。居心地のいい家に、愛すべき夫と息子2人..(何か言いかけて)...私の蝶々はぺちゃんこにならなかった。)

*レナードをさらに落ち込ませてしまったことに気づいて、リアはちょっと慌てます。

Ria:Oh, I am sorry for messing up your trifle and putting off your chips.

(トライフルをダメにした上に、チップス(フライドポテト)を食べられなくしてごめんなさい。)

putting off your chips:直訳すると「あなたのチップスを思いとどまらせる」。つまり、リアの話で食欲がなくなって彼のお皿にのっていたチップスが食べられなくなったことを指していると思われます。

Leonard: Well, at least I escaped with my coffee.

(まあ、少なくともコーヒーは無事だったし)

その後、リアは振り返りざまにショルダーバッグで彼のコーヒーを倒します。さすがのリアも言葉を失い、「Yes」とだけ言って逃げるようにその場を立ち去ります。)

 

スクリプトが見つからなかったので私の聞き取り&訳は完璧ではないかもしれませんが、雰囲気をつかんでいただければ嬉しいです。

二人のシーンはこのようにいつもテンポがよく会話が進んでいきます(その分早いし聞き取りも難しいです..(TT))。

一方彼女の夫はいい人なのですが、昔気質で真面目、悪く言えば「ノリの悪い」タイプで、愛情表現も下手。そんな夫がナンパ盛りの息子たちと合うはずもなく、家族のコミュニケーションはいつもギクシャクしているため、会話が途切れ途切れです。息子たちはちょっと若者風なしゃべり方をしているので聞き取りにくいですが、一応雰囲気が分かる動画を見つけましたのでリンクしておきます。

www.youtube.com動画の補足:

「お湯がない」と文句を言う夫。彼がバスローブを着ていることから、これからシャワーかお風呂にしようと思っていたことがうかがえます。息子たちを(リア経由で)問い詰めて先にお風呂でお湯を使ってしまったので、貯蔵式の給湯タンクが空になってしまったことを知ります。ここで事情を説明すると、英国では貯蔵式の給湯タンクを使っている家庭がけっこうあり、その場合は家族間で使用する時間を調整しないとこういうトラブルが起きます(日本みたいに追い炊きできればいいんですが)。

その後、夫がリアに向かって、いい年しているのに仕事もしないでぶらぶらしている息子たちの事を嘆きます。そして「僕の若い頃は...」と始まります。リアは、「時代が違う」と夫を諭そうとします。どこの国も同じですね。

 

このコメディはカーラ・レーンという女性の脚本家が書いています。それだけに当時の女性はいろいろと共感できる部分があったようです。78-83年まで、4シリーズ(全28話)続きました。

 

こちらが全編です(daily motionより)

www.dailymotion.com

 

なお、このドラマのオープニングテーマは「Love Is Like a Butterfly」(Dolly Parton )という曲です。

では

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ロケ地、SFチックな難解なストーリー、シンプルな英語が魅力の「The Prisoner(邦題:プリズナーNo.6)」(英語解説有り)

今回は日本でも知る人ぞ知るの「The Prisoner」を取り上げてみたいと思います。日本では「プリズナーNo.6」という題名で放映されたそうですが、残念ながら私は日本語吹き替え版を見たことがありません。

このドラマシリーズは1967-68年に英国で製作放映され、主役を務める俳優のパトリック・マクグーハン(Patrick McGoohan)が製作にも関わっています。主人公は元スパイですが、物話の設定が近未来的でロケ地が英国らしくないところから、現代でも多くのファンがおり、さまざまな解釈がなされたりと、(その界隈では)なにかと話題に尽きないようです。

 

では早速本編の第1話”Arrival”をご紹介します。

www.youtube.com

You tubeで出る自動翻訳がまあまあでしたので、今回はMERCURYさんのサイト"The Prisoner"--Episode One - POSP Appendix”も参考にさせていただきました。

 

<あらすじ>

冒頭はスパイだった主人公が上司と口論になり仕事を辞職し自宅に帰ったところ、睡眠ガスで眠らされ、「The Village (村)」に連れて行かれます。家具付きのコテージを自宅としてあてがわれた主人公は、住民に質問したり地図を入手しようとしたりして「村」の実態を知ろうとしますが、思うように行きません。

主人公は村を監視するNo.2に呼ばれ、仕事を辞めた理由と自分が持っている情報を話すよう促されますが拒否します。No.2のヘリコプターに同乗し、村を案内された主人公は、自由が無いことを除けばそこそこ快適で健康な生活が営めるようになっているといルという説明を受けます。主人公は、この村には何らかの理由で囚人となった人々が生活していおり、村人は番号で呼ばれ、自分がNo.6であることを知ります。

この村では脱出をしようとすると「ローヴァー( Rover)」とよばれる白い大きな球体に捕えられます。主人公も試みて失敗し、気絶した主人公は病院で旧知の友人に出会い、情報交換を試みますが医師に中断され、不気味な患者の姿を目にします。その後友人は窓から飛び降りて自殺をしたと知らされます。自殺した友人の葬式の列を見て涙を流す女性に話しかけると、彼女は脱出の手伝いを申し出ます。彼女からローヴァーを避けられる腕時計式の機器を受け取り、ヘリコプターに乗り込みますが、途中から操縦桿が中央制御され、やむなく村へ戻されてしまい、脱出失敗。。というお話です。

 

このドラマは、海外でも見られることを最初から意識して作られたのではないかと思います。ロケ地が英国っぽくないこと、英語に強い訛りがほとんどなく、映像や画面中の看板の文字などからも状況が理解できるように工夫されています。

 

冒頭の2:26までは主人公が拉致されるまでのいきさつを映像のみで表現しています。また、会話は早めで聞き取りは大変ですが、文字おこしされた文章を見ると、教科書のような基本的な表現が多く使われていることが分かります。

 

<英語表現のご紹介>

①No.2がNo.6に朝食について質問する場面:

11:45~

No.2: Tea or Coffee?

No.6: Tea.

No.2: Indian or China?

No.6: Either. With lemon.

No.2: One or two eggs with your bacon?

No.6: Two

No.2: That will be all.

説明:

Indian or China?:お茶の産地はどちらがいいか尋ねています

One or two eggs with your bacon?:いつものベーコンに付け合わせる卵は1個、2個のどちらにしますか?

この"your bacon" という表現は興味深いですね。

”How do you like your eggs? ”(卵の調理法はどうしますか?)という表現はよく使いますが、このyour には「あなたの好みの」「あなたの定番の」みたいなニュアンスがこもっています。

直訳すると「君がいつも食べているベーコンと、卵は1個か2個にするか?」となります。

村の上層部は、No.6に関して目視確認可能な情報はほぼすべて把握しています。つまり、No.6が朝食にいつもベーコンを食べることは分かっているということ。卵の数もわざわざ聞いていますが、映像から判断するに、卵2個がNo.6の定番だということも知っているようですね。

 

②職安での所長とNo.6とのやりとり

22:13~

Manager: And now the questionnaire. Just fill in your race, religion, hobbies...

What you like to read, what you like to eat... what you were, what you want to be... any family illnesses... any politics?

職安の所長が、No.6に質問票に記入するよう促す場面です。

what you were:前の仕事

直訳すると「何者だったか」ですが、ここは職安なので前の職業のことを尋ねていると考えるのが妥当です。

 

③村にある自分のコテージに戻ったNo.6とメイドとの会話

No.6は部屋に鳴り響く音楽を消そうとスピーカーを壊しますが、音は消えません。そのとき先ほど部屋から追い出したメイドが戻ってきます。そんなメイドにNo.6がたたみかけるように質問を浴びせかけます。

25:22~

No.6: How do you stop this thing?*

Maid: We can't.

No.6: Why not?

Maid: It's automatic.

No.6: Who controls it?**

Maid: I have no i---

No.6: Who runs this place?***

Maid: I don't know!   I really don't know!

***

*How do you stop this thing?:こいつはどうやって止めるんだ?

**Who controls it?:誰が制御しているんだ?

this thingとitは部屋に流れる音を指しています。

 

No.6: Have you never wondered? Have you never tried to find out?

<解説>

「疑問に思ったことは一度もないのか」と尋ねています。

"Have you ever~"「~したことはありますか」のeverがneverになることで強い口調になり、彼の苛立ちが伝わってきます。

 

No.6はメイドの身の上についても尋ねます。

No.6: And your parents?

Maid: They died when I was a child.

No.6: You don't remember them?

Maid: I've found out it's wiser not to ask questions. We have a saying here: "A still tongue makes a happy life".*

*"A still tongue makes a happy life":この「still」は「動かない」という意味なので「沈黙」という意味になります。

この後に逃げた人はいるのか、何人戻ってきたかなど、さらにNo.6の質問は続きメイドを困らせます(長くなるので省略)。

 

メイドはNo.6の信頼を得て情報を上層部に流せば自分は解放されるという交換条件を出されていることを告白します。

Maid: Put yourself into my position.* They offered me my freedom in exchange.

No.6: Exchange for what?

Maid: To get into your confidence. Make you trust me**. And tell them everything about you.

* Put yourself into my position:私の立場になって考えてください。("put oneself into one's position"~の立場になって考える)

**To get into your confidence.:あなたの信頼を得る。次の文章Make you trust meとほぼ同じ意味です。

 

No.6: Then they'd let you go? You believe that? With that knowledge in your head, you really believe that they'd let you go?*

Maid: I hadn't thought about that.

No.6: Obviously not.

Maid: They might. They might let me go. If you give me some sort of information. 

 

*With that knowledge in your head, you really believe that they'd let you go?

そこまで分かってて、奴らが逃がしてくれるとでも思ってるのか?

they'd let you go:"they would let you go" このwould は未来意思「~する意思がある」という意味。直訳すると「彼らに君を解放する意思があると本気で信じているのか?」となります。

 

<まとめ>

②でご紹介した職安で質問攻めにされて主人公が激怒する場面ですが、現在の私たちはそのような心理的な抵抗がだんだん薄れてきているような気がします。慣れとは恐ろしいもので、常に誰かとつながっていて、GPSで自分の現在の居場所を知らせ、カメラで監視されても気持ちが悪いと感じない。むしろ治安のためにはその方がいいだろう、といった考え方をする方も増えてきていますね。

また③でご紹介したメイドとの会話のシーンでは、「人は長期にわたって恐怖に支配されると、論理的な思考ができなくなる」という普遍的な事実が描かれています。権力者はその事実を利用して村の囚人を支配し、恐怖を感じていないNo.6にはそのような支配の仕組みが見えてしまうのです。

以前の世の中を知っている私たちはまだしも、そのようなデジタル管理社会で生まれ育った人たちは「The Prisoner」を見てどのように思うのでしょうか。1960年代に製作されたにもかかわらず、この物語は現代の私たちにたくさんの問いかけをしているように感じました。

 

...ということで、いろいろな見方が出来るThe Prisoner。英語の勉強にもなるし、物語としても十分楽しめるので、興味を持った方はぜひご覧になってみてくださいね。

 

では Have a nice day!

 

 

一昔前の元祖『Paddington』(くまのパディントン)の子供向けストップモーション・アニメは意外と手強い(本編・英語紹介あり)

今回は日本でも人気の『くまのパディントン』を取り上げます。イギリスの作家マイケル・ボンドの児童文学作品が元になっているので、絵本を読んだことのある方もいらっしゃるかもしれません。

このブログは「一昔前の英国」がテーマですので、ここでご紹介するパディントンはカラフルなアニメでも新しい映画でもなく、1976–80年にBBCで放映されたコマ撮りで地味~な背景のストップモーション・アニメです。日本のNHKでも放映されたそうですが、残念ながら私は見ていません。

 

出鼻をくじくようですが、絵本や紙芝居を読んでもらっているようなナレーションを聞き取るのはノンネイティブにとって至難の業です。おまけにナレーションのスピードがド早い(^^;)。さらに追い打ちを掛けているのが台詞の部分で、語り手が物語の進行の中でhe said, she said..とたたみかけるように語るのを聞いていると、だんだん集中力が無くなり、気がついたら話が終わってたなどということもしばしば...(遠目)。

 

救いは子供向けであるということと、短いという点。一話5分程度ですので、you tube の自動作成字幕と一時停止を上手に使って、見てみてはいかがでしょう。

 

では第一話をどうぞ。パディントン駅でブラウン一家がパディントンと出会い、パディントンを引き取って家に迎え入れる決心をするところまでのお話です。

www.youtube.com

<英語表現>

0:53頃

パディントンのセリフ:”I am not supposed to be here at all. I am a stowaway.”(自分は本当はここにいてはいけないんです。密航者なので。)

not supposed to:してはいけないことになっている

stowaway:密航者 

not supposed toはイギリスでよく聞く表現です。

4:00頃

ナレーション:he directed a hard stare at the driver(彼は運転手をにらみつけました)

実はこれはパディントンの得意技でして、私は勝手に「ガン飛ばしの術」と呼んでいます。この後の話でも似たような表現がでてきます。

似た表現で、give a stare at ~:をじっと見詰める というのもあります。

 

4:19 ミセス・ブラウンのセリフ:It remains to be seen(そのうち分かるわよ)

ミスター・ブラウンの「Are you sure we are doing the right thing?(君は、僕たちが正しいことをしているという確信があるのかい?)」という問いかけに対する、奥さんの返事です。

remain to be seen:現時点では[今のところ]不明である

 

ちょっと懐かしい雰囲気と、英語の響きが心地よい一昔前のパディントンもたまにはいいものですよ。

ちなみに、個人的にはパディントンの「かわいくない」所が好きです(爆)。

『The Good Life』-第一話あらすじ(ざっくり)

以前当ブログで取り上げた『The Good Life』の第一話(Season1Episode1)をご紹介します。

 

トムとバーバラが自給自足生活を始める決心をするまでのお話です。

You tubeの動画が消されていたのでDailymotionにリンクしなおしました。

www.dailymotion.com

 

大まかに言うと、

1.トムが40才の誕生日を迎えた朝に「なんか物足りないな」とぶつぶつ言うシーン

2.トムが会社でちょっと浮いているシーン

3.夕方にトムがバーバラと「したいことリスト」を書き出すシーン

4.夜中にトムとバーバラが自給自足の生活を始めることを決心するシーン

で構成されています。

 第1シリーズのエピソード1のタイトル「Plough one's own furrow」には「自分の畑を耕す」という意味から転じて「他の人の助けや影響なしで自分だけでやっていく、自分の道を行く」という意味があるそうです。

エピソード2からやっと本筋に入ります。彼らが家の前を耕したり、家畜が登場したり、隣の夫婦が驚いたりするのはもちろん、昔ながらのオーブンを中古で手に入れてパンを焼いたり、無料で手に入る「ある」もので発電できるシステムを地下に作ったりします。時には、トムたちの資本主義離れした生活にあこがれる学生たちをホームステイさせたり、庭で収穫したものとサービスや物品と交換しようとするなど、家庭菜園とか、自給自足とか、ちょっとでも憧れたことのある方は、わくわくするような内容になっています。かくいう私もワクワクして、庭仕事やパン焼きやらに凝ったことがあります(^^;)。

あと、バーバラ(Felicity Kendal)が地味にかわいいです(見た目も役どころも)。あんな奥さんなら、旦那さんも幸せだろうな、と思わせる魅力があり、実はあるエピソードで、隣人のジェリーが酔った勢いで彼女を口説こうとするシーンもでてきます。

(なお、Felicity Kendalは、近年では日本でもちょっと話題になった「ローズマリー・アンド・タイム」でRosemary 役を務めています。)

 

『The Good Life』の概要はこちら↓

gatocalico.hatenadiary.jp

DVDも出ているようですね。

『The Avengers』(本編紹介)

当ブログで以前取り上げた『The Avengers』の本編をご紹介します

以下の動画はSeason5Episode23の『Murdersville』(Murders+ville(殺人の村))。You tubeの字幕はかなり正確にでている印象です。自動字幕では固有名詞(人名や地名)の最初の文字は小文字表記になるので、固有名詞に気をつけると良いです。

 

www.youtube.com

 

舞台はLittle Storping (リトル・ストーピング)という小さな村。ある日村人たちが見ている前で殺人が起きます。偶然この村の外れに幼なじみのポールが引っ越すということで、車を出してあげたエマが、不可解なトラブルに次々とまきこまれていきます。

ある理由のもと堅く結束しあう村人たちですが、それに反抗する村人数人と、不審に思って行動を起こそうとするエマは村の小さな博物館に拘束されてしまいます。34分辺りではエマがchastity belt(貞操帯)で拘束されているシーンが見られます(私はここでお茶を吹きそうになりました..)。

見どころは、エマとスティードが電話で話すシーン(40:22~)。村人はエマを殺すつもりですが、そのままだと警察から疑われてしまうので、エマに電話を掛けさせ、居場所について嘘の情報を伝えるよう強制します。エマは現在自分がこの村に居ることを知っているのは「夫」だけと言い、村人たちが見ている中で、スティードに電話をかけます。

実際にはスティードとエマは夫婦ではなく(エマの夫は長期行方不明中)、あくまで仕事だけの関係(ということになっています)ので、通常は「ミセス・ピール」「スティード」と互いに姓で呼び合っています。ところが、ここではエマが夫と話しているふりをするため、彼を「ジョン」(スティードのファーストネーム)で呼び、子だくさん夫婦みたいな話しぶりで、スティードに自分が危機状態にあることを感づかせ、博物館とパブというキーワードを会話に織り込むことで、巧みに居場所を知らせます。2人の息が合ったテンポの良い演技も見どころです。

なお、この回の撮影で使われたAldburyという村は人気のロケ地で、モースでもパブがロケに使われたそうです。

en.wikipedia.org

 『The Avengers』の概要はこちら↓

 

gatocalico.hatenadiary.jp

https://www.amazon.co.jp/Avengers-the-Import-anglais/dp/B002RNOS4M/ref=tmm_dvd_title_0?_encoding=UTF8&qid=1623205292&sr=8-14